遺言の重要性について

事情は人それぞれです


 皆さんそれぞれ、ご家庭の事情というものがあると思います。
 不仲な兄弟姉妹がいたり、口うるさい親類縁者がいたり、はたまた家を飛び出したまま音信不通の子供がいたりすることもあるでしょう。
 また家族に内緒の財産や借金があったり、愛人や隠し子がいたりと表面化していない事もあるかもしれません。

 そして、相続が始まると思い掛けないトラブルになり、これまで仲が良かった家族が急にギスギスした関係になったなんて話はどこにでもあります。 

 親族間での紛争というのは、お互いに遠慮せず何でも言える関係であるがゆえ、一旦争いとなると、収拾がつかないほどもめることも多く、相続をキッカケに他の親族と疎遠になったという話も聞きます。 また、財産が少ないからといって、トラブルが起こらないとも限りません。

 

どうすれば相続トラブルを防げるのか?


 当たり前ですが、そもそもトラブルの種を抱えておられた方がこの世にいない事が原因です。突き詰めて言うと、故人の生前の意思表示が曖昧だったからだと思います。

 つまり遺言でハッキリ意思表示をしておくことで、思わぬトラブルも回避できると思います。

 何故か多くの方が「遺言を書くほどの財産が無いから…」とおっしゃいます。
 しかし、遺言書は財産の多い少ないに関係なく、相続手続きの必要書類になると同時に、自身の心情を、残された者に伝え理解してもらうという側面もあるのです。
 実はこれが相手に伝わることで多くのトラブルやわだかまりが解消されることになり、思いやりがこもっていればいるほど私は良い人生の幕引きになると考えています。
 「自分が死んだら…あとは好きなようにやってくれ」などと思われている方は、残される者に対して少し気遣いをすることをお勧めします。

遺言書が特に必要となる方

 遺言を残すことの重要性についてお話させていただきました。

 次に、遺言書が特に必要な方とはどんな方なのか?ということを具体的にみていきます。 

 

ケース1【子供のいないご夫婦の場合】


 夫婦の一方が死亡した場合、残された配偶者と被相続人(財産を残して亡くなった人)の兄弟姉妹(被相続人の親が生きていれば親)が相続人となります。配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1という法定相続分となります。

 

 夫婦が共に築いた財産を、これにまったく関係ない兄弟にも配分しなければならないのです。また、兄弟のうち死亡している者がいれば甥(おい)や姪(めい)が代襲相続人となり、遺産分割する際には、甥や姪に頭を下げてお願いしなければならないという事態ともなります。 場合によっては、解決金などの出費を余儀なくされる恐れもあります。 

 

 そこで、遺言書で「財産をすべて配偶者に相続させる」旨の記載をしておくのです。

そうすれば、全て配偶者に相続させることができ、兄弟姉妹等の協力も必要ありません。

また、どちらが先に亡くなるのか分からないので、夫婦別々に相互遺言を作っておくべきでしょう。すると、いずれが先に亡くなったとしても、配偶者が全ての財産を相続することが可能となります。


ケース2【子供たちの兄弟仲が悪い場合】


 兄弟仲が悪いと、相続が発生した場合もスムーズな遺産分割協議ができません。ますます兄弟仲が悪くなるだけです。遺言を書いておくことにより、遺産分割協議も必要なくなり、スムーズな相続手続ができます。

 できれば遺言書の中に、なぜそのような遺言の内容にしたか、以後兄弟仲よく暮らすよう、付言を書いておくとなお良いでしょう。

 

ケース3【孫に遺産の一部を分けたい場合】


 どら息子の子供でも、孫はかわいいものです。教育資金として預貯金を遺贈されては如何でしょう。


ケース4【相続人となる方の中に行方不明者がいる場合】

 所在が不明で連絡が取れない相続人がいると、遺産分割協議ができません。場合によっては、遺産としての預貯金が一切引き出しできない事態ともなります。遺言を書いておけば遺産分割協議が必要なく、遺言執行者によって預貯金の引き出しもスムーズにできます。

 

ケース5【個人事業の経営者又は農業従事者の場合】

 事業用資産(農地、工場など)は後継者に相続させる必要があります。そうでないと場合によっては事業が継続できなくなることもあります。

 遺言を書くことによって、後継者には事業用資産を中心に相続させ、その他の相続人には現金などを相続させるなどの工夫ができます。また、事業に貢献した後継者には、寄与分を考慮した相続割合にするなどの配慮も必要でしょう。そして、事業用負債は後継者に負担させたい旨の遺言も可能です。

 

ケース6【内縁の妻(夫)がいる場合】


 内縁の妻とは、事情があって婚姻届が出されていない事実上の妻のことです。たとえ何年同居していても相続権はありません。ちゃんと遺言を書いておけば、より多くの財産を内縁の妻に残しておくことができます。

 

ケース7【先妻(先夫)の子供と、後妻(後夫)がいる場合】

 先妻の子供と後妻は同居していなかったり、仲が悪かったりする場合がよくあります。遺言がなくて遺産分割協議をしようとしても、スムーズには進まないでしょう。ちゃんと遺言を書いておけば、遺産分割協議をする必要もなく、残された妻には現在の住居を相続させたり、特定の子供により多くの遺産を相続させることもできます。

 

ケース8【身体障害者の子供がいる人】

 病気がちであったり、障害のある子供の行く末は心配です。親が一生面倒を看ることもできません。遺言がなければ健康な子供もそうでない子供も同じ相続分となります。遺言を書くことによって、障害のある子供により多くの財産を相続させることができます。障害の程度によっては、遺言者の生前、別の成年後見人を家庭裁判所で選任してもらうことができます。また、未成年後見人は遺言で指定しておくこともできます。

 

ケース9【息子の妻に介護の世話になっている人】

 同居の息子の妻が義理の父母の介護をしていることが良くあります。しかし、たとえ何年同居していても、息子の妻には相続権はありません。ちゃんと遺言を書いて、世話になった息子の妻にも形として残るもの(現金や株式など)を感謝の気持ちとして遺贈されては如何でしょうか。

 

 

ケース10【相続人がまったくいない場合】

 相続人がまったくいなく、特別縁故者もいなければ、遺産は国のものになってしまいます。遺言を書くことによって、生前たいへんお世話になった人や、介護が必要になった際に世話して頂くことを前提に遺産を遺贈されては如何でしょう。また、市町村や公的福祉団体に寄付するという遺言も良いでしょう。寄付の場合は、現金や更地の土地が喜ばれがちです。

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